2012年7月アーカイブ

何年か前に愛知医大の佐藤啓二先生が日整会骨軟部腫瘍学会を主催されたときに、ゲストスピーカーとしてサグラダ・ファミリアで30年近くにわたり働かれている彫刻家・外尾悦郎さんを招かれて、そのお話を聞いて以来一度は訪れねばと思っていた。ヨーロッパ癌会議がバルセロナで催されるというので、それに参加し、学会の合間の午後にその場所にようやく先々週にたどり着くことができた。憧れのガウディと二人のパブロ(ピカソ、カザルス)を生んだ街は、期待にたがわぬ素晴らしいところだった。個人的には、緑に乏しく木と土のにおいのしない石に囲まれた土地は苦手なのであるが、バルセロナは旧市街を除くと緑の山と青い海に囲まれた素敵な土地だったので大のお気に入りの一つとなった。

米国に暮らしたころ、南米からの移民、いわゆるヒスパニックの人々とは少し交わりにくい印象が強かったので、そういった先入観をもっていたが、スペインの人たちにはそういった印象はまったく抱かなかった。それにしても観光客にあふれ、昼の盛りからワインやビールをたしなむ人々からは、ギリシャに続いてユーロを揺るがす経済的難題を抱えた国のようには、バルセロナの街ではまったく感じることがなかった。こんなところに住んでみたいとも思うが、たしかに仕事などしたくなくなるだろうなという気もした。それにしても、上記の3人以外にも、ミロやダリなどの天才がどうしてこの土地から立て続けに輩出されたのかいささか不思議な気がする。サグラダ・ファミリアは、昼食時に訪れるとそれほど並ぶこともなく入館できた。外尾氏のお話にあった自然の造形を手本として、楽器としても機能する構造になっているという部分など、その時のお話を思い出しながら鑑賞したが、理解が十分に伴ったとは言い難く、もし自分が生きている間に完成することがあれば(一応ガウディ没後100年、2026年をめどとしているそうな)再び訪れてみたいと思った。その時には、もちろんFCバルセロナのゲームとリセウ劇場でのオペラ鑑賞も付加したいと思う。

帰国した翌日には東京での日整会骨軟部腫瘍学会晩餐会に参加させていただいた。この日のゲストは、なんと布施 明さんで、我が国有数の歌唱力の持ち主である氏の歌を堪能することができて、こちらも我々の年代のものにとっては印象深いものとなった。 愚呑坊

過日、第12回日本抗加齢医学会に初めて参加した。近年、多くの大学で加齢制御医学といった講座もできつつあるが、抗加齢というとまだまだ美白だのしわ取りだの、あるいはサプリメント医学などとなんだかいかがわしいイメージが付きまとう印象があるように思う。なのに何ゆえ抗加齢学会などに?かというと、ずっと癌の勉強をしてきて、抗加齢医学を少しかじってみると、どうも細胞・分子レベルでは、がん細胞は抗加齢に必要なたいていのことをやっているのではないかと思えてきたからである。多くの臓器で老化が癌化に関与するとしても、いったん癌化した細胞は老化を知らず増殖し続ける、これこそまさに抗加齢ではないかと感じる。もう一つは、体性幹細胞の老化を防ぐことができれば、多くの疾患の予防にもつながるように感じたからである。(残念ながら、まだまだ勉強不足で理解者はごく少数にとどまりますが・・・。)

我々が日々の診療で数多く扱う骨粗鬆症、関節症、脊椎症、サルコぺニアなどは、すべて加齢に関連するものである。今回の学会でも、いくつかこれらに関連したシンポジウムも組まれていて、scientificにも堪能することができたが、残念ながら予防医学的な(昨今は先制医学とも・・)分野ゆえ、整形外科医の加齢医学に対する意識はとても低い。surgeonとしてのidentityがそうさせるのはしごく当然のことである。ただ、大きく運動器学としてわれわれの分野を捉えると、こういったアプローチも今後必要になるのではないかと思われる。治療薬が百花繚乱の骨粗鬆症などは予防ができれば、やりたい放題の多くの製薬会社をぎゃふんと言わせることができるし、国家的医療費の削減にもつながる。整形外科医も、もう少し抗加齢医学会での存在感が大きくなっていいと思われた3日間だった。蛇足ながら、最優秀演題という場違いな賞を頂き、さらにパシフィコ横浜を1周する早朝マラソンにも参加して大いに学会を楽しむことができました。 愚呑坊